傷跡


 規則正しい寝息が聞こえる。
 腕の中には、深く眠る和葉。
 頬にかかってくすぐったそうにしている髪を梳いてやると、軽く身じろぎをする。
 和葉の吐息と布団から出た白い肩が、平次の悪戯心を煽った。
 抱きしめていた腕を解き、和葉をうつぶせにさせる。
 その上にのしかかって背筋に沿って口づけて……ふと見つけた。
 ――滑らかな肌に残る、小さな傷跡。
 ロバートにやられた……いや、自分がそばにいながら守ってやれなかった、その証――。
 平次はケロイド状に残った傷跡にそっとキスをして、和葉を後ろから抱きしめた。
「平次……? どしたん……?」
 目を覚ましてしまったのか、和葉が寝ぼけた声を出した。
「何でもないわ。まだ寝とり」
 そう言って少し乱暴に髪をなでると、平次の腕に和葉が手をかけた。
 何がおかしいのかふふっと笑う。
「何やねん」
 しかし、返事はない。
 ――もう寝とんのかい。
 平次は軽く息を吐いて、和葉を抱きしめる腕に力を込めた。
 お前のことは、絶対にオレが守ったるからな。
 改めて、そう心に誓って――。

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