平和的日常
昼休み。 平次と和葉はそれぞれの友人と食後のひと時を過ごしていた。 と、不意に和葉がスカートのポケットに手を当てた。 「……っと、ちょっとごめん」 「何、メール?」 「うん……平次ー?」 携帯を開いてメールを確認した和葉は、ぐるりと首をめぐらせた。 呼ばれて平次も和葉を見る。 「何や?」 「アンタ、今日は部活、何時に終わる?」 「あー? ミーティングだけや言うてたから、遅ても1時間くらいちゃうか?」 「えー、そうなん? 今日に限ってぇ」 不満そうに言って、頬を膨らませる和葉。 「何か用事か?」 「さっきおばちゃんからメール来てな。おばちゃん、急に出かけることになったらしくて、買い物頼まれてん。やけど、お味噌やら牛乳やら重いもんあるから、平次に付き合ってもらお、思たのに」 「何や、お前は遅いんか?」 「今日は、合気道の先生が来はる日やねん。2時間以上しごかれるのは目に見えとるわ」 「ほんなら、俺が代わりに買い物してきたるわ。牛乳と味噌と……あと何や?」 「んー、平次、今日何食べたい?」 「せやなー。うーん、酢豚はどないや?」 「……またそんなめんどくさいもんを……。まあええわ。確か、まだ竹の子残ってるはずやし。ほな、豚肉と……パプリカ……赤と黄色、1個ずつな」 言いながら、和葉はメモを取っていく。 その他にもぶつぶつ言いながらいくつか食材を書き、和葉は平次にメモを渡した。 「おい和葉、パプリカ2個も買うのに、ピーマン1袋て何や? 酢豚がピーマンだらけになるわ」 「そのピーマンは違うよ。こないだのハンバーグの時に残ったひき肉、いい加減使わなアカンと思て。量が半端やし、ピーマンの肉詰めにするわ」 「明日の弁当は肉詰めか」 「そーゆーこと。ほな、頼むわ。お味噌はちゃんと、いつものおっちゃんのとこで買うてよ」 ――何で今ので「弁当のおかず」ってわかるねん! ――ちゅうか……服部の弁当も遠山が作ってたんや……。 ――服部家の台所事情がこんだけわかるっちゅーのもすごいと思うぞ。 ――そもそも、服部のオカンは何で息子やのうて遠山に買い物頼むんや?
クラスメイトはひそひそとツッコむが、当の2人には届いてないのであった。 |