草食系男子
「『ボイス』終わっちゃったねー。えーた、カッコ良かった〜」 「私は毎週『めいちゃん』観てた! ひろくんが超素敵だったよー。私もあんな風に仕えてもらいたい〜」 「「周りにああいう草食系男子、いないかなあ〜」」 悶える2人の前で、大口を開けてハンバーガーを頬張る少女が1人。 「草食系? 何それ」 聞くと、香坂・梅宮が一斉に可奈を見た。 「アンタはほんとに呑気だね。あ、そっか。可奈にはもう草食系王子がいるもんね」 「雑誌でも特集組まれてるんだよ」 香坂が拗ねたように頬杖をつき、隣に座っていた梅宮が女性雑誌を取り出した。 開いたページの見出しは 「草食系男子のオトしかた?」 まだ頭に「?」を浮かべる可奈に、梅宮がページをめくる。 「こっちにチェックシートがあるよ。燈馬君でやってみたら?」 可奈は乗り気がしないまま、雑誌を指でなぞった。
- ■チェック項目
1. 財布の中に、ポイントカードが5枚以上入っている 2. 食事は1日に2回、もしくは1回 3. スイーツに目がない 4. 地元の友達と遊ぶ機会が多い 5. 家族、特に母親と仲が良い 6. エコに興味がある 7. 飲み会の席で、1杯目からソフトドリンクを頼むことがある 8. ヘアスタイルやスキンケアに気を遣っている 9. 女性とお泊りしても、何も起きないことがある 10. 人と競争するのが嫌いだ |
「えっと、○が3つ、かな。 『草食度30%。恋も仕事も攻撃型、いまや絶滅の危機に瀕している肉食系。 時代の流れを読まないと、モテなくなる日は近いかも』 だって」 「ええーっ!? それはないでしょう!」 「診断、間違ってるんじゃないの?」 可奈の出した結果に2人とも不満を露にするが、可奈とてちゃんと読んで考えたのだ。 「そんなこと言ったって。 ポイントカードは断ったりしてお財布の中はシンプルだし、1は×でしょ。 食事は、何かに没頭すると抜いちゃうことがあるくらいだから○。 スイーツ……食べなくはないけど、目がないって程じゃない。×。 地元って、燈馬君の場合はボストンだよね。ロキとかともよく遊んでるけどやっぱり距離あるし、こっちでもけっこう交友関係広いよ。今日も、ネットで仲良くなったどっかの大学教授の講演に行ってる。だから×。」 「えー、意外」 「家族と仲が良い……うーん、悪くはないと思うけど、お互い自立してて別に住んでるし×でしょ」 「そういえば、燈馬君の家族ってどうなってるの?」 「ご両親は建築家と歴史学者で、歴史的建造物の修復で世界を飛び回ってるんだって。妹がいて、ボストンで1人暮らししてる。学者一家だね」 「へえー」 「エコ……ファーストフードにも普通に入るし、マイ箸持ち歩いてるわけじゃないし、×。 飲み会ったって、未成年だから当然ソフトドリンクだけど。けど、ロキに『つき合い悪い』とか絡まれても飲まないし。20歳になっても、自分が飲みたくなければ飲まないと思うよ。○」 「そんな感じだね」 「でしょ? たまに寝癖ついてるから次は×。 一緒に旅行に行ってる私と何もない。○」 「そこがわかんないんだよね。何でアンタらつき合ってないわけ?」 「だからそんなんじゃないって。 最後ね。好戦的なわけじゃないけど、挑まれたら負けないよ。結構負けず嫌い。×」 「そうなの!? 今のが一番びっくりした」 「ほら、やっぱり○3つじゃん。草食系じゃないんだよ」 勝ち誇ったように言う可奈に、香坂と梅宮は顔を見合わせた。 「まあ、あれだね」 「うん」 「何よ」 「つまり、隣にいるのが可奈だから、燈馬君が典型的な草食系に見えるってこと」 「どーいう意味よ!」 「ほら、アンタが一番肉食系じゃん」 ねえ? と頷きあう2人に可奈は異論を唱えたが、全く聞き入れてもらえないのだった。
□あとがき□ チェックシートは、某情報サイトの特集ページより。 「みんなの知らない燈馬君をよく知っている可奈ちゃん」が書きたかったのです。 はるき目線で燈馬君を分析(というほどではないですが)してみましたが、いかがでしょうか?
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