放課後。
 だいぶ陽が短くなって肌寒さが増してきた。
「ね、今度、お弁当作ってあげるね」
「また唐突に。大丈夫ですから」
 おざなりな返答に、可奈は想の前に回りこみ、その顔を見上げた。
「何で。今日もパンだったじゃない。体によくないよ。どうせ自炊なんかしてないんでしょ?」
「今度今度って、具体的な日にちを言ったことないじゃないですか。作ってきてくれたこともないですし」
 一息に言われて、可奈は瞬いた。
 想は少し目を見開いて視線をそらせる。
 頬が、心なしか染まっているような気がする。
「あれあれ〜?」
「……何ですか」
「もしかして、拗ねてるの?」
「何を言ってるんですか」
 踵を上げて覗きこむと、想が半身を反らして逃げる。可奈も負けじと更に追いかけた。
 何度か顔だけの追いかけっこを繰り返して、可奈は小指を差し出した。
「じゃあ、明日! 明日、お弁当作ってきてあげる。約束!」
 勢いに押されて、想もおずおずを小指を出す。
 可奈は間髪入れず捕まえて、強引に「指切りげんまん」を成立させた。

「今日はスーパー寄ってくからここで。じゃ、明日ね。バイバイ!」
 可奈は走ってスーパーへと向かった。
 後には、自分の小指を呆然と見つめる想が立ち尽くしていた。


□あとがき□
 今週のQED、10分遅れで見始めたら2人が土手を歩いていて、可奈ちゃんが「今度お弁当作ってあげる」と言っているところでした。
 ラストの方でも同じセリフがありましたね。
 その唐突さにインパクトがあって書いてみました。

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