可奈は、想の部屋に入るなり右手を出した。
「燈馬君、携帯貸して」
「どうぞ。忘れたんですか?」
「んーん。ほら、この間、天真爛丸さん家でなくしちゃったでしょ?結局出てこなかったから買い直したんだよ〜。父さんにめっちゃ怒られてさ。しばらくお小遣いカットだよ。ツイてない。
はい。これ、私の新しい番号とメアド。登録しといたから。あと、燈馬君から私宛にワン切りとメール送信させてもらったよ。登録しとくね。ここに来る途中でショップに寄ったから、燈馬君メモリ1番だよ」
「これから知り合い全部の人に番号確認するんですか!?」
「しょうがないじゃん、全部携帯に入れてたんだもん。覚えてるわけないし」
「……バックアップって知ってます?」
「今度から取ります。もー、言うのやめてよ。めんどくさいのはわかってるって。
残しておきたい写真もあったのになあ。燈馬君、私がタイムスリップしたって話、信じてくれないんだもん。あっちの世界で撮った写真もあったのに」
「まだ言ってるんですか」
「ねー、『塔場』さんて、燈馬君のご先祖じゃないの?」
「違います。ほら、宿題に集中してください。ノート開いて」
「はぁい」
可奈は携帯をカバンにしまい、宿題にとりかかったのだった。
□あとがき□
別ジャンルの某サイト様で「浮気の見分け方」というネタ(?)がありまして。
彼女(または彼氏)からの「携帯貸して」に断ったりうろたえたりしたら怪しい、んだそうです。
燈馬君は個人情報の入っているものをホイホイ人に貸したりしなさそうですが、そこは
「可奈ちゃん」だから「必要以外のところは見ない」と信頼してる とか
「メモリにはロックをかけてる」(こっちの方がありえる…) とか
いろいろ考えていただけると助かります(人任せか)。
|