衝立の向こうから、規則正しい寝息が聞こえる。
塔場は寝つけず、身を起こした。
衝立をずらすと、可奈がすやすやと眠っている。
――不思議な少女だ。
未来から来たというその少女は、出会いも服装も言動も奇妙なものだった。
しかし、いつの間にか明るい笑顔と行動力に引き込まれている自分を感じている。
そっと可奈の頭に手をやる。
当たり前だけれど、すっぽりと手中に収まるのは初対面のときと同じだ。
その小ささに改めて感心してしまう。
と、可奈が身じろぎした。
「ん……とう……」
どきりとした。
思わず彼女の頬をなでる。
「とうまくん……ただいま……」
にっこり笑う彼女に、手が強張った。
手を引っ込めて衝立を元に戻し、再び布団に入った。
明日、彼女は未来に帰ってしまう。
――帰って欲しくない。
その気持ちを告げたら彼女はどうするだろうか。
いや。
明日、自分には羊子の誘拐犯を対峙し、龍門寺家の謎を解く使命がある。
可奈の温もりの残る手を見つめた。
――明日、彼女は未来に帰ってしまう。
塔場は手を握り締め、目を閉じた。
――今夜は眠れそうにない。 |