可奈は空を見上げた。
 どこへ行くのだろう、飛行機が飛んでいく。

 ……いつか、燈馬君も――。

 そんなことを思っていると、隣を歩いていたはずの想がいない。
「燈馬君、待って、待ってよ〜」
 先を歩いていた想が立ち止まり、振り返る。
「水原さん、何やってるんですか。置いてっちゃいますよ!」
「置いてってから言わないでよ」
 可奈はようやく追いついた想の肩を押した。
「置いてかないでよ」
「ちゃんと待ったじゃないですか」
 可奈はもう1度拳を振り上げた。
 想がよける素振りを見せるが、可奈はその手で想の制服をつかんだ。
「置いてかないで」
 想の顔を覗きこむと、その顔に「?」が浮かんでいる。
「水原さん?」
「黙って置いていかないで」
「……? はい」
「約束だよ」
 可奈はようやく笑顔を見せた。


□あとがき□
 7話のラスト、可奈ちゃんの「待って」に立ち止まらない燈馬君に不安を感じて書いたSSでした。

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